芹澤 覚|会長 2014.08.08
日本では入浴中の死亡者数が夏場には5人前後であるのが、12月には30人、1,2月も20人前後と大きな差があります。
まだまだ、家の中の断熱が悪い家が多いのだと思います。
しかし、断熱を良くしたからと言って、それだけで家の中が温かくなるわけでは有りません。
暖房はシッカリとやらなければなりません。
断熱のシッカリとした家は、同じ暖房費でも、より暖房効果が上がるということです。
今までと同じように、ケチケチと居間だけ温めるというような暖房の考え方では、断熱性能を良くしても意味がありません。
せっかく断熱性能を良くしたのですから、今までと同じ程度の暖房費用で、一部屋だけでなく家全体が暖まりますから辛抱やガマンをせずにシッカリと連続して暖房しましょう。
そもそも、人間が家の中に居て感じる温かさとは室温(家の中の空気の温度)とMRT(室内表面温度)の平均値なのだそうです、コレを体感温度と言います。
MRTとは室内の壁や天井、床の表面温度のことです。
躯体の断熱性能を上げてゆけば内壁の表面温度が室温に近づき、空気温度を不必要に上げなくても体感温度がついてくるようになります。
熱は伝導と輻射、対流で伝わります。
伝導は触れているものから伝わる熱のことです。
対流は部屋の空気の温度によって空気が移動して体に伝わることです。
輻射は部屋の壁や天井などの温度が放射する熱です。
日に当たると温かく感じたり、コンロや焼けた炭のそばに行けば熱いと感じるのが輻射熱です。
部屋の空気がたとえ26℃でも周りの壁、天井が外気に冷やされて8℃しかなければ合計して2で割った17℃としか感じないです。
それに対して、部屋の空気が20℃でも壁、天井がシッカリ断熱されて20℃ならば体感温度は20℃になるのです。
ですから、暖房で大事なことは断熱をしっかりとして、暖房を持続することです。
光熱費が気になって暖房をすぐ切ってしまうとMRTが上がらないので温かく感じ無いことになってしまいます。
ですから、暖房とは継続した暖房を行い部屋の床、壁、天井を暖めなければ効果が無いのです。
断熱性の良い家は暖まった床、壁、天井はその暖かさが持続するのです。
ところが断熱性の低い床、壁、天井はいくら暖めてもドンドン冷えてゆきます。
つまり、高断熱とは持続した暖房をするために暖房効率を上げる方法なのです。
冷房でも同じことが言えます。
高断熱の家では冷房を持続することで家の中の床、壁、天井が快適な温度となって、あまり冷房温度を低くしなくても涼しく感じていられるようになるのです。
という訳で高断熱の家は冷暖房の設定温度を極端に上げたり下げたりしない
夏ならば28℃、冬ならば20℃の設定で冷暖房費用を抑えても快適な温度空間が得られるということになります。
特に暖房の場合は、日本人のように靴を脱いで素足が床に触れる生活では床が暖かくないと足元から冷えてしまいます。
足元が暖かければ頭のあたりが少し涼しいくらいでも足裏が暖かいので寒さを感じません。
床暖房は理想的な暖房方法です。
もうひとつ、冬場の寒いときの暖房の方法としては
断熱と気密の効いた家では開放型の暖房は禁物です。
開放型の暖房とは灯油ストーブやガスストーブのことです。
灯油ストーブやガスストーブは灯油やガスを燃焼することによってH2OやCO2が発生します。
計画換気で換気しているといっても、多量に発生するCO2は空気を汚し、室内の酸素を消費します。
また、発生するH2Oは空気中の水分量を増やして飽和水分点をあげるのでチョットした温度差でも結露を招きやすくなります。
燃焼によって発生したH2OやCO2を煙突で運びだしてくれるマキストーブや暖炉、あるいはFFファンのストーブは酸素の供給さえ気をつければ高断熱・高気密住宅でも使えますが、発生したH2OやCO2が部屋に充満する開放型の暖房だけは控えてください。