芹澤 覚|会長 2013.09.24
「日経ホームビルダー」という住宅関連の雑誌を定期購読しています。
6月号の記事から・・・。
「高断熱住宅が健康に良いか?」というテーマで行われた実験の報告です。
一つは
調査協力者の自宅(築20年位上の特別な断熱対策を施していない建物)と
モデル住宅(省エネルギー対策等級4の建物)での生活において、居住環境が生活者の血圧などにどのような影響を与えるかを調べたものです。
この検証は13年2月に高知県梼原(ゆすはら)町で実験されたもので、23世帯28人の住人(65歳前後)が調査に協力しました。
実験の結果は
自宅よりモデル住宅での測定値の方が平均して6mmHg低い。
モデル住宅では自宅に比べて起床直後の急激な心拍数の上昇は生じなかった。
同様に、入浴時は自宅に比べてモデル住宅のほうが心拍数の変化は穏やかだった。
病理学的には、急激な心拍数の変化や血圧・血流の変化は弱い血管が切れたり脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす危険性があると言われますが、実験結果から「室温の変化が少ない高断熱住宅の方が血管に生じるリスクを軽減する傾向があると推測される。」と書いてありました。
また、これとは別に高知県土佐町(25世帯29人)と山口県長門市(63世帯143人)で居住環境と血圧に関する実測調査を行った。
20代~70歳以上の幅広い世帯が協力していただいた。
調査では起床時や居間での生活時の血圧や室内温度の測定と、食事や睡眠、飲酒、運動量の生活習慣についても分析した。
結果、同じ居住環境内で室温が10℃違うと「動脈硬化が進行している人ほど室温の影響を受けて血圧が高くなる傾向がある。」
別の調査は「断熱改修の前後で居住環境と健康の変化についての調査」です。
東京都埼玉で築20年位上の戸建住宅に住む高齢者19人(59~80歳)の協力を得て、内窓の設置、壁・床の断熱改修を実施して改修の前後で室温や協力者の血圧測定と健康に関するヒアリングを行いました。
約1年間を掛けた追跡調査でした。
「日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票」を使ってのアレルギー症状の評価では、改修後は有意(偶然とはは考えにくく意味のある程度)に症状が改善されたり、睡眠の質が改善され、血圧も変化が見られた。
以上のことを踏まえて、調査の報告では「住宅居室断熱改修の結果、睡眠やアレルギー症状に良い影響を与える可能性が示唆された。 また、血圧の低下や安定化について有用である可能性がある。」とまとめられている。
症例では、「血圧が安定したせいか、肩こりが和らいだ。」「改修前は窓の結露でカビは発生しアレルギーの症状が現れていたが、改修後は結露がなくなりアレルギー症状が和らいだ。」「改修後は神経痛の症状が和らいだ。」などのヒアリング結果がある。
以上の3つの実験から
「年間を通じて、また、1日の中で温度変化の緩やかな室内環境では血圧の安定化について有用で、その結果、アレルギーその他の症状が和らげられる効果がある。」
と言った推論ができるようです。