芹澤 覚|会長 2013.06.07
朝日新聞のGLOBEから
福島第一原発事故は、原発から出る高レベル放射性廃棄物をめぐる米国の
政策決定にも影響を及ぼしつつある。
「使用済み核燃料」を保管したり捨てたりする施設を速やかに整備する必要性を
改めて浮き彫りにしたからだ。
この問題を将来に先送りしてはならない。
米国では、福島の事故の時に
原発内の貯蔵プールにある「使用済み核燃料」がどういう状態にあるかを
把握できなかった事態を重く受け止めた。
オバマ政権は、2010年に既定の「使用済み核燃料」の最終処分場の計画を
検討しなおすことになり、新たな計画委員会を立ち上げた。
「使用済み核燃料」を地中に捨てる最終処分場の候補地を改めて探すとともに
当面の間、保管しておける中間貯蔵施設を作るように提言している。
日本は「使用済み核燃料」を全量再処理してプルトニウムを取り出す
核燃料リサイクル政策を揚げているが、
原発の先進国である米国は、とっくに再処理計画を見送っている。
米国は廃炉となった原発跡地で「使用済み核燃料」を
空冷式の乾燥貯蔵容器に保管している。
他の国々もこの方法に追随するだろう。
年月が経って放射能レベルが下がれば
プルトニウムを得ようと目論むテロリストが、保管された「使用済み核燃料」の容器に
近づくことも容易になり、格好の標的になる危険性がある。
再処理計画について、フランスや日本が進めようとしてきた従来の技術では
天然ウランを使うのに比べて著しくコストが高く
米国にとっては、再処理は魅力的な選択肢ではなかった。
プルトニウムは粉末の状態がもっとも危険で、
再処理するときにプルトニウムをペレットに加工する過程では
どうしてもプルトニウムを粉末状にして扱う必要があり、
その危険に対処するために大きなコストがかかる。
2030年までには第4世代原子炉とよばれる再処理に適した新型炉が
導入される予想だが、どれほど技術が進んでも再利用できない廃棄物は残る。
だから、最終処分場の必要性は変わらない。
中間処理施設が「中間」ではなく事実上の最終処分場になってしまわないように
中間処理施設の受入先に、明確な説明と保証が必要である。
そして、その約束が果たされない場合の制裁金などの義務を負う
仕組みも構築しなければならない。
中間処理施設といえど、ソコに格納される「使用済み核燃料」の
危険性は変わらない。
だから、建設地は断層などの地下構造のチェックなど原発と同じ
注意が必要となる。
コレは人間としてもモラルの問題だと思う。