芹澤 覚|会長 2014.07.10
高断熱・高気密の家は魔法瓶と同じ効果があると考えてください。
熱いお湯を魔法瓶に入れたら長く熱い温度を保ってくれます。
冷たい水を入れたら同じように長く冷たい温度を保ってくれます。
でも、どちらも永遠に同じ温度を保てるわけではありません。
何時間か過ぎれば冷めてしまいます。
そもそも断熱材と言う言葉が誤解の素です。
断熱材は熱を遮断するものと思っている方は多いと思いますが、読んで字の如しではないのが断熱材なのです。
正確に表現すると熱伝導遅延素材という表現のほうが解りやすいでしょう。
つまり熱の伝わり方を遅らせるための熱の抵抗素材なのです。
JIS規格で規定する熱伝導率が0.06W/(m・K)以下の熱伝導遅延素材を通例、断熱材と表現しています。
ですから、いくら性能の良い断熱材で家を囲って窓を締切りにしていても、長い時間の間には、家の中は外と同じ温度になってしまいます。
そこで、この魔法瓶の中にエアコンや暖房機を入れて家を冷蔵庫や温蔵庫のようにしてやるわけです。
家庭の冷蔵庫も大きな冷凍倉庫も、周囲をスチロールなどの断熱材で囲ってエアコンを回しているだけで基本的には同じ構造です。
家庭の冷蔵庫は小型のエアコンで冷凍倉庫などは住宅や事務所ビルで使う隠蔽タイプのエアコンとまったく同じものです。
という訳で、高断熱・高気密住宅でもエアコンや暖房器は必要です。
が、ここからが差の出るところですが、高断熱・高気密住宅は断熱効果つまり熱伝導遅延効果が高いので一般の住宅よりもエアコンや暖房機の能力が小さくて済みます。
おおざっぱに言えば半分でOKです。
だからエアコンの電気代が少なくて済むわけです。
そこで、もうひとつエアコンの使い方の提案は「ぜひ、シーズンになったらエアコンも暖房器もスイッチを入れっぱなしで使ってみてください。」ということです。
私の理想はシーズン中ズットつけっ放しです。
夏は7月から9月いっぱい、冬は11月末から3月いっぱいつけっ放しでよいと思います。
今のエアコンはインバータータイプで温度感知をして、シッカリ設定温度をキープしてくれます。
そもそも、エアコンや冷蔵庫などのモーターを回すタイプの機械は起動時に大きな負荷がかかって電気代がかかるのです。
蛍光灯もひんぱんにスイッチの入り切りするより、つけっ放しの方が電気代もかからないし寿命も長いといわれますが、エアコンも同じです。
ちょっと、話題を変えて・・・
そもそも、人間の体感温度というのは周囲の空気の温度だけで決まるのではないそうです。
熱はエネルギーの移動形態の一つです。
物体間で仕事を通じて移動する以外のエネルギーの移動形態を熱といいます(伝導・対流・輻射)。
人間も周囲を包んでくれる部屋の空気から伝導あるいは対流で、そして周りの壁・天井から輻射という形で熱を感じてトータルで熱い寒いを感じるのだそうです。
つまり、部屋の中の空気の温度だけでなく、床、壁、天井の温度も大事になるのです。
いかに、部屋の空気の温度を上げても、床や壁や天井が外気温度で冷たかったり、暑かったりするとエアコンの効きが悪いと感じドンドン、エアコンの設定温度を下げるという悪循環になるのです。
断熱効果の高い高断熱・高気密の家ではエアコンや暖房機を回し続けることで家の中の床・壁・天井の温度を家の空気の温度と同じにすれば家の中全部が同じ温度になって気持ちよくすごせるわけです。
また、そうすることで夏のエアコンの設定温度も28℃、冬の暖房機の設定温度も20℃というゆるい温度で十分効果がでるので、そこでまた電気代が安くなるわけです。
こうして、設定温度をゆるくしてつけっ放なしにしていても、こまめに入り切りするのと電気代に差は出ずに、部屋は快適になるはずです。
そして、春や秋の気持ちよい季節になってエアコンや暖房機が必要でない季節には思いっきり窓を開けて外の空気を家に取り込んでください。
当社のお客様で天井ファンをつけているお客様に聞くと、エアコン、暖房機をつけて天井ファンも回すと効果が違うそうです。
空気をかき回してくれるので部屋の上下の温度が均一になる効果があるようです。
吹抜けや階段を通して1,2階の温度も一緒になるようです。
私もこれからは積極的に天井ファンをお勧めするつもりです。
私が考える、高断熱・高気密の組み合わせの理想は「アイシネンにLow-Eペアガラス樹脂サッシとエアコンと蓄熱タイプの床暖房」です。
これはけっして贅沢ではありません。
確かにイニシャルコストは高くなりますがランニングコストは確実に低く抑えられます。
イニシャルコストとランニングコストのトータルでは確実に安くなるはずです。
仮にトータルのコストが同じだったとしても、ガマンする生活より快適な空間が手に入るほうが良くはありませんか。